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近畿地方におけるカワウの標識鳥情報の収集 −市民参加の可能性−
和田 岳 (大阪市立自然史博物館)
近畿地方では、2001年より昆陽池(兵庫県伊丹市)や竹生島(滋賀県琵琶湖)で、カワウにカラーリングが装着されはじめました。カラーリング装着当初より、大阪鳥類研究グループが中心になって、カワウのカラーリングの情報を集め、ホームページ上でそのデータを公開しています。
http://www.mus-nh.city.osaka.jp/wada/OBSG/Pc-rings.html
大阪鳥類研究グループは、大阪市立自然史博物館友の会のメンバーなどが中心になって形成されたサークルで、現在はさらに拡がり、会員数も70名を超えています。毎月、野外観察会や室内実習を行うと同時に、さまざまな鳥の調査を実施しています。
そうした調査の一環として、以前からカラーリングを付けたユリカモメの情報を集めていました。ユリカモメですでに行っていたので、カワウにカラーリングを装着すると聞いたときにも、すぐにカワウのカラーリング情報を集めることになりました。残念ながら会員が大阪を中心とした地域に集中しているせいもあって、カワウのカラーリング情報はもっぱら大阪府周辺からしか集まっていません。
カワウのカラーリング情報を市民を通じて集めることを考える際、ユリカモメのカラーリングとの比較が参考になると思います。ユリカモメは、餌を与えれば人のすぐ近くまで来るせいもあって、多くの人が放っておいてもカラーリングの存在に気付きます。また、双眼鏡さえあれば、時には肉眼でもリングの文字が読みとれます。その結果、ユリカモメのカラーリング情報は、会員はもちろんのこと、会員以外のいわば飛び入りの情報も多く寄せられます。
一方、カワウの場合は、人の近くに来る事が少なく、さらに足が見えにくいこともあって、望遠鏡がないとなかなかリングの文字までは読みとれません。その結果、会員以外からの情報がなかなか集まりません。それどころか、一部の会員のみが熱心にカワウのカラーリングを探しているというのが現状です。
発表では、今までに手元に集まった近畿地方のカワウの標識情報を紹介しつつ、市民参加の可能性について考えてみたいと思います。
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