まず、カラーリングによる標識と参加型調査課題のまとめを行い、具体例として兵庫県昆陽池と滋賀県竹生島において近年実施している標識調査についてそのねらいを紹介する。
カワウのコロニーや営巣数の増加問題は、西日本においても徐々に大きくなろうとしている。これらの問題の実態把握や対策のためには、標識調査にもとづく地域個体群の情報把握が欠かせない。カワウの雛へのカラーリング標識は、関東地方や東海地方で盛んにおこなわれてきたが、西日本では、1992・1996年に滋賀県で少数に標識を行っただけであった(びわ町竹生島と近江八幡市伊崎半島のコロニーで計36羽の雛へ標識をし、１羽が滋賀県、２羽が愛知県他で確認された)。2001年より兵庫県伊丹市昆陽池のコロニーで、2002年より竹生島のコロニーで標識を再開し、ホームページを利用した標識観察者とのフィードバック方式によって成果が得られつつあるので紹介する。

・ 昆陽池と竹生島のコロニー
　昆陽池の中にある日本列島の形をした島に1995年よりコロニーができ2002年には約300巣が営巣している。2001年より片岡・須川が標識を開始。伊丹市により擬似卵を使用した営巣抑制の実験が行われている。竹生島のコロニーは1982年より営巣を開始し近年約数千巣が営巣している。2002年より植田・須川が標識を開始。カワウによる森林枯死がおこっており、一部で地上営巣がはじまっている。

・ 雛に標識したカラーリング
　福田道雄氏のカワウ標識調査グループから支援を受けて、番号を手彫りして自作。右脚に環境省金属リング、左脚に青色に白文字(腹側にアルファベット、反対側が数字)を刻印している。

・ ホームページを利用した観察者へのフィードバック
　昆陽池と竹生島で標識されたカワウの観察依頼文と確認記録を紹介するホームページを大阪市立自然史博物館のホームページ(http://www.mus-nh.city.osaka.jp/)内にある和田岳学芸員のページ(和田の鳥小屋)に設け、標識鳥の観察記録は和田宛て( )に連絡してもらい、確認記録を掲載してカラーリングの観察者への情報のフィードバックが可能なようにした。

・ カラーリング確認状況
　府県別確認状況は、昆陽池(兵庫県)で標識した個体はは兵庫県と大阪府が中心であるが、巣立ち後まもなく滋賀県で３羽が確認された。一方、竹生島(滋賀県)で標識した個体はまだ滋賀県における確認がないが、愛知県・広島県・東京都・栃木県で確認されたことが注目される。2004年より滋賀県によって竹生島における標識数を増やすことができたので、これらの傾向がより明らかになるものと期待している。
■カワウ標識個体番号一覧■

昆陽池と竹生島の2001年〜2004年カワウ標識個体番号の一覧を以下に示します。
標識個体が見つかりましたら、和田岳様あてご連絡下さい。詳しくは、以下のサイトをご覧下さい。
http://www6.ocn.ne.jp/~cring973/
http://www.mus-nh.city.osaka.jp/wada/OBSG/Pc-rings.html　
2004年9月16日　須川　恒

兵庫県伊丹市昆陽池、滋賀県竹生島
2001年〜2004年カワウ標識個体の番号
◆兵庫県伊丹市：昆陽池 全て青色白文字左脚に装着
2001年4月3日： A8、C0、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、E0、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、E8、E9、F0、F1、F2、F3、F4、F5、F6、F7、F8、F9、G0、G1、G2、G3　（合計35羽）
2001年4月17日： A9、G4、G5、G6、G7、G8、G9、H0　（合計8羽）
2001年6月9日： H1、H2、H3（白化個体）、H4、H5、H6、H7、H8、H9、J0、J1、J2、J3、J4　（合計14羽）
2001年7月3日： J5、J6、J7、J8　（合計4羽）
2002年3月22日： J9、K0、K1、K2、K3、K4、K5、K6、K7、K8、K9、L0、L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7※、L8、L9、M1（合計22羽）
2002年4月2日： M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、N0、N1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8、N9、P0、P1、P2　（合計21羽）
2002年6月15日： P6、P7、P8、P9、R0、R1、R2、R3、R4、R5、R6 （合計11羽）
2003年4月19日： R7、R8、R9、S0、S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、T0、T1、T2　（合計16羽：S1以下はカラーリングのみ）
2003年6月21日： T3、T4、T5、T6※、T7※、T8、T9、W4、W5、W6、W7、W8、W9、X0、X2、X3、X4、X5、X6、X7（合計20羽：X1は未使用）
2003年7月12日： X1、X2、X3（合計３羽）
2004年４月18日：Y0、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Z0、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5、Z6、Z8、Z9、AA、AB、AC、AE、AF、AG、AH、AJ、AK、AL、AM、AN、AP、AR、AS、AT、AU、AV、AW(合計38羽)
2004年６月12日： GA、GB、GC、GD、GE、GF、GG、GH、GJ、GK、GL、GM(成鳥)(合計12羽、内１羽成鳥)
※昆陽池コロニー内で回収


◆滋賀県：琵琶湖竹生島 全て青色白文字左脚に装着
★(右脚に金属リングと黄色コイルリング装着)
2002年6月3日： P3、P4、P5　（合計3羽）
2002年6月16日： U0、U1、U2、U3、U4、U5、U6、U7、U8、U9、V0 （合計11羽）
2003年6月14日： V1、V2、V4、V5、V7、V8、V9、W0、W1、W2、W3 （合計11羽）★
2004年6月6日： BA、BB、BC、BD、BE、BF、BG、BH、BJ(合計９羽)★
2004年6月10日： BK、BL、BM、BN、BP、BR、BS、BT、BU、BV、BW、BX、BY、BZ、CA(合計15羽)★
2004年7月14日： CC、CD、CE、CF、CG、CH、CJ、CK、CL、CM、CN、CP、CR、CS、CT、CU、CV、CW、CX、CY(合計20羽)★
2004年7月21日： CZ、DA、DB、DC、DD、DE、DH、DJ、DK、DM、DN、DS、DT、DW、DX、DY(合計16羽)★
2004年7月28日： JA、JB、JC、JD、JE、JF、JG、JH、JJ、JK、JL、JM、JN、JP、JR、JT、JU、JV、JW、JX、JY、JZ(合計22羽)★
2004年8月4日： KA、KB、KC、KD、KE、KF、KG、DL、EA、EC、EE、EG、EJ、EK、EL、EM、EN、EP、ER、EU(合計20羽)★
2004年8月11日： EV、EW、EZ、FF、FG、FK、FN、FU、FV、KH、KJ、KK、KL、KM、KN(合計15羽)★
2004年8月21日： KP、KR、KS、KT、KU、KV、KW、KX、KY(合計9羽)★