滋賀県のカワウ調査
須藤一成((株)イーグレット・オフィス)
滋賀県が実施している調査の一部を紹介する。
琵琶湖に生息するカワウの生態調査として、大規模な繁殖コロニーである竹生島および伊崎半島において、個体数および営巣数を推定するための調査を実施した。また、竹生島において、繁殖率(卵の孵化率および幼鳥の巣立ち率)調査、ならびに幼鳥の分散を調べるための脚輪装着による標識を実施した。
繁殖抑制手法を検討するために、竹生島北西部地域において、卵のオイリングを行い、繁殖抑制効果を確認するために約1ヶ月の経過観察を行った。
これらのうち標識調査および個体数・営巣数推定法について報告する。
1.幼鳥の分散調査
体重が1kg以上の巣内ヒナを捕獲して、標識のための脚輪を装着し、再び巣内にヒナを返した。脚輪は3個で、左脚に近畿を示すカラーリング(ブルーに白文字)、右脚に環境省のアルミリングと竹生島産であることを示すサブリング(黄色)を装着した。6月6日、バンダーによる装着方法を見学後、6月10日から(サブリングを改良して実施)8月21日までの期間に7日間(6/10、7/14,7/21,7/28,8/4,8/11,8/21)、推定20〜35日齢のヒナに脚輪を装着した。
現在、竹生島では1個体に合計3個の脚輪を装着しているが、個体への負担を軽くするために、できるだけ脚輪の数を減らすことと脚輪の質を見直す必要があると考えている。豊富な色のバリエーションがあるカラーリングを使用することで、現在の分散調査のシステムを壊さずに脚輪を2個(カラーリングと環境省リング)にできると考えられる。
今後、カワウへの脚輪の装着が全国各地で広く実施される可能性もあり、将来を見据えた地域ごとの色分けを早急に確立する必要がある。
2. 個体数調査
夜明け前の午前3時50分から8時までの約4時間、コロニーに出入りする個体数を、双眼鏡とカウンター(数取り器)を使用してカウントした。伊崎半島では、半島の南西側をカバーする湖上の1地点、半島の東側および北東側をカバーする陸上の2地点、合計3地点の観察地点を設定した。竹生島では、島の東と西をそれぞれカバーする湖上の2地点に観察地点を設定した。
伊崎も竹生島も、4時前から飛び立ち始め、コロニーへ帰ってくる個体がコロニーから飛び立った個体より多くなる時間帯は同じ(5:10〜5:20)であった。逆転する時間帯までの累積カウント数が、朝一番に採餌のためにコロニーから飛び立った個体の総数と考えられる。また、この時点で少なくとも巣には1羽の親鳥がいると考えられることから、カウント数と営巣数を合計した数値を生息数とした。なお、カウント漏れやコロニーに残っている個体などが想定されることから、2日間のカウント数のうち多い方のカウント数を採用した。
コロニーから出る個体が巨大な群れを形成するのとは異なり、コロニーに帰る個体は大群にならずに小群で飛来した。このことから、繁殖していない(巣に帰る必要のない)個体が、すぐにコロニーに戻らずに湖面や河川などで過ごしているのではないかと考えられた。
3.営巣数調査
伊崎半島と竹生島において、巣が観察されないエリアを除いた営巣範囲を条件の異なる複数のブロックに分割し、各ブロックにおいて、30×30mの区画を選定し、区画内にある全ての巣を数え、区画あたりの営巣数と各ブロックの面積比によって、全域の営巣数を推定した。面積の算定には、5×5mメッシュを使用した。
伊崎半島では、植生および植物の枯死状態によって9ブロックに分割した。
竹生島では、ロープ張り・追い払い・銃器駆除などの影響、植生、巣の密度差などによって、13ブロックに分割した。東斜面の樹木と巣が少ないブロック、ならびに北東部にある小島のブロックは、区画による抽出ではなく全巣を数えた。
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