青H3から始まったカワウ調査
−近畿地方のカワウのねぐらとコロニーの分布−

奥田幸男(大阪鳥類研究グループ)

大阪の堺市の大津池には白いカワウがいます。体は白いといっても目は青緑色なので、本当のアルビノではなく、全身がうすいベージュのまだら模様に見えるバフ変個体です。この白いカワウを初めて見たのは、2001年7月の大阪市立自然史博物館の『鳥の野外調査 定点観察』の行事でサギのねぐら入りを見た時でした。この白いカワウには青H3という足環がついていて、2001年6月9日に伊丹の昆陽池でヒナの時に須川さんによってつけられたものでした。

バフ変個体に足環付きということで、個体識別が簡単にできるので、カワウが一日をどのようにすごしているかを家族で調べてみることにしました。白い色からアルビノではないものの『アルビー』という名前も付けて、追いかけているうち、このカワウにとても愛着がわき毎週のように見に行きました。当初、鳥は規則正しい生活パターンを持っているものと勝手に思い込んでいたのですが、実際は、アルビーにはそのような行動パターンはなく(あるいは見つからなく)、ただ、自身の腹時計にしたがって生活しているような鳥でした。

このアルビーの生活を調べている時に、何度か見失いどこに行ったのか、カワウが集まっていそうなところへ探しに行くうち、カワウのねぐらがいくつか見つかりました。アルビーがねぐらのある場所を教えてくれているかのようでした。そこで、もっと広範囲に、カワウのねぐらを調べてみようと思い、京阪神での集団ねぐらの発見と継続的な観察とその場所で繁殖するかどうかの調査を企画しました。和田さんとの連名で2002年3月に、大阪鳥類研究グループ会員に呼びかけ、カワウ調査グループとして調査をはじめました。

大阪鳥類研究グループでの調査(大阪府全域、京都府の京都市以南、兵庫県昆陽池、奈良県の北部、和歌山県紀ノ川流域)と、家族での調査(近畿のそれ以外の地域)を併せると;兵庫県、大阪府、京都府、奈良県と三重県伊賀地方、和歌山県北部では当初の2002年の繁殖期に見つかっていたねぐらは15ヶ所(うち4ヶ所で繁殖)だったのが、2004年の繁殖期には46ヶ所(うち12ヶ所で繁殖)になりました。ねぐら探しと並行して、カワウの足の見ることのできる時は足環を探してきました。家族で見た足環は102個、(アルビーが59回、残りは35個体のべ43回)でした。
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