イベント情報
第12回バードリサーチ大会(研究集会)のお知らせ
バードリサーチでは、会員の集いとして毎年バードリサーチ大会と銘打って研究集会を開いており、今年は北海道美唄市で行ないます。バードリサーチからドローンを使った水鳥の調査、全国鳥類繁殖分布調査などの活動報告と、宮島沼水鳥・湿地センターの牛山克巳さんから宮島沼のマガン保全の課題などについて発表があるほか、会員・参加者の皆さんからの口頭発表とポスター発表も募集します。ご自身の調査結果を発表してくださる方は、大会参加申し込みの際に、送信フォームに発表タイトルなどの必要事項をご記入ください。発表されない方は当日参加もできますが、定員があるため事前申し込みにご協力いただけると助かります。また、翌日には探鳥会を企画しています。みなさまのご参加をお待ちしております。
口頭・ポスター発表希望の方は9/15まで、懇親会は9/25までに参加申し込みをお済ませください。
非会員の方も参加していただけますが、会費無料の会員区分もありますので、よろしければご入会ください。
主 催
認定NPO法人バードリサーチ、宮島沼水鳥・湿地センター。
日 時
研究集会 2017年 9月30日(土)13:00 ~ 17:00(参加費無料 受付12:00~)
懇親会 同日18:00~20:00
(会場近くを予定:4000円程度。9/25までにお申し込み下さい)
マガン観察会 2017年10月 1日(日)宮島沼 5:00~7:00。
現地集合解散となります。詳細は末尾
宿泊は各自で手配をお願いします。
会 場
美唄市役所 2階大会議室(休日のため表玄関横の職員通用口を利用してください)
交通案内
JR美唄駅から西へ約500m程度。
プログラム
13:00~13:10 開催の挨拶
13:10~14:30 口頭発表
14:30~15:30 ポスター発表
15:30~16:50 口頭発表
17:00 閉会
18:00~20:00 懇親会
演 題(順次追加します)
口頭発表・ポスター発表共に発表者を募集しています。9/15までにお申込ください。
口頭発表は1題20分(発表15分、質疑応答5分)。ポスター発表は適当なサイズで結構です。
=口頭発表=
・宮島沼周辺でのマガンの食害対策<牛山克巳 宮島沼水鳥・湿地センター>
・ドローンを使った水鳥調査<神山和夫 バードリサーチ>
・全国鳥類繁殖調査から見えてきた鳥たちの変化<植田睦之 バードリサーチ>
・北海道のカラ類、最近どうでしょう ー繁殖分布調査のデータより<三上かつら バードリサーチ>
・酪農学園大学野生動物医学センターWAMCを拠点にした野生鳥類対象の疾病調査研究<浅川満彦 酪農学園大学>
・全天空遠隔監視システムと画像解析を用いたマガン飛来数のモニタリング<山田浩之 北大・農学研究院>
・人工林の伐採はヨタカに生息地を提供するか?北海道中部での経年調査<河村和洋 北大・院・農>
・タンチョウの給餌場滞在時間に関わる要因は何だろうか?<正富宏之・正富欣之 タンチョウリサーチ>
=ポスター発表=
・GPSデータロガーによるリュウキュウアカショウビンの渡り追跡 <植村慎吾 北海道大学>
・最終氷期が生み出す環日本海地域における集団動態の並行性 ~カケスの系統地理学的研究から~ <青木大輔 北海道大学>
・神奈川照ヶ崎と北海道のアオバト初認日比較 <大坂英樹>
・島嶼の鳥類繁殖分布調査 <佐藤望 バードリサーチ>
・九十九里浜のシロチドリ保護柵と効果<守屋年史 バードリサーチ>
・GPSで追跡した伊豆沼のオオハクチョウ<植田睦之・内田聖・嶋田哲郎・杉野目斉・高橋佑亮・時田賢一・三上かつら >
・鳥の卵:形と色の謎<黒沢令子 バードリサーチ>
【口頭発表要旨】-順次追加します
宮島沼周辺でのマガンの食害対策
牛山克巳(宮島沼水鳥・湿地センター)
近年急速に増加しているガン類による農業被害は世界的に問題となっている。宮島沼では1990年代にマガンによる小麦食害が顕在化し、地域農業との軋轢を生みだした。マガンによる小麦食害は、秋の滞在期、春の滞在期の初旬と終盤に発生するが、それぞれの発生理由は異なると考えらえれるため、小麦食害の発生メカニズムを理解した上で効果的な対策を講じる必要がある。そこで、一連の行動生態学的研究が実施され、規模の大きい春の滞在期終盤の食害はマガンの主要食物である田んぼの落ちもみが枯渇が主要な要因となっており、代替採食地の整備が有効な対策となることなどが示唆された。しかし、これら対策を実施するためには多くのステークホルダーの理解と参加が不可欠であり、地域づくりという視点が必要とされている。本発表では、宮島沼におけるマガンと農業の共生の現状をお伝えする。
全国鳥類繁殖分布調査で見えてきた鳥たちの変化
植田睦之(バードリサーチ)
今年から,全国の鳥の状況を明らかにする「全国鳥類繁殖分布調査」が始まりました。2020年の完成を目指して調査を行なっています。まだ始まったばかりの調査ですが,外来鳥や大型の魚食性の鳥の分布拡大が続いていることと,夏鳥が復活している可能性が見えてきています。他地域で減っているオオヨシキリの分布が拡大していたり,他地域で分布が拡がっているハクセキレイがやや減っている可能性があることなど北海道の特殊性も見えてきています。
ドローンを利用したガンカモ類のカウント調査
神山和夫(バードリサーチ)
ガンカモ類は湖沼で大きな群れを作りますが、周囲に小高い場所がない場合も多いので、そういう場所で岸から観察すると、個体同士が重なって数えるのが難しいことがあります。大きな湖沼では群れが遠方にいることも、個体数調査をやりにくくする原因となっています。そうした課題を解決するため、ドローンを使った空撮調査を試行してきましたので、ドローンを使うと何ができて、何ができないのかを報告したいと思います。
北海道のカラ類、最近どうでしょう ー繁殖分布調査のデータより
三上かつら(バードリサーチ)
2016年より実施されている全国鳥類繁殖分布調査のデータのうち、カラ類(シジュウカラ、ヤマガラ、ヒガラ、ハシブトガラ)に注目した。1990年代の調査時と今回の調査において、比較可能な地点を抽出し、出現状況を比較した。いずれの種においても新たに出現したコースも消失したコースもみられたが、ハシブトガラでは現時点では消失したコースが多い。そこで、ハシブトガラが減少している可能性や、関係があるかもしれない要因について検討を行った。
全天空遠隔監視システムと画像解析を用いたマガン飛来数のモニタリング
〇山田浩之・横山諒(北大・農学研究院)・牛山克巳(宮島沼水鳥・湿地センター)・嶋田哲郎(宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団)
近年、冬鳥として飛来するマガンの個体数は全国的に増加傾向にある。その飛来地では、マガン排泄物の蓄積による湖沼の富栄養化、隣接農地での食害、さらには高病原性鳥インフルエンザの感染拡大に対する懸念もあり、マガンに限らず渡り鳥の行動や個体数監視の必要性が高まっている。従来の監視方法には、目視によるポイントセンサス法(従来法と略す)が採用されるが、調査員不足とコスト高、観測誤差の問題が指摘されている。最近では、カメラ搭載UAV を用いたカウント法に期待が寄せられているが、高頻度・広範囲の撮影の困難さ、UAV の接近による鳥への影響が指摘されている。これらの問題を打開する方法として、現地設置型の監視カメラの使用が挙げられる。ねぐら入り時に水域に集結し飛び立つマガンの連続撮影により得られた画像を用いることで、個体数の計測が可能となると考えられる。しかし、定点監視カメラによるカウント法は、観測機器や画像処理法も含めていまだ確立されていないため、事例の蓄積が求められているところである。そこで、本研究では、遠隔での操作・データ取得が可能な監視システムと、それより得た画像の解析によるマガン個体数推定法を開発することを目的とした。本発表会では、システムの概要と画像解析による自動カウントの説明のほか、2016年9月と2017年5月、可能であれば2017年9月に取得したマガンのねぐら入り、飛び立ちの画像を用いて実施した自動カウント結果について報告する。
人工林の伐採はヨタカに生息地を提供するか?北海道中部での経年調査
河村和洋(北大・院・農)
ヨタカは日本で近年大きく減少している鳥類種の一つですが、伐採直後の造林地で繁殖することが知られています。そこで、人工林伐採地においてヨタカの生息状況を経年的に調査することにしました。本発表では、3年間の途中経過を報告します。調査は、生物多様性に配慮して伐採地に広葉樹を残す実験を行っている北海道有林で行いました。調査の結果、5林分でヨタカの生息を確認しました。伐採から数年経過した伐採地や、ギャップを伴う天然林対照区でヨタカの生息を確認した一方で、伐採前や人工林対照区では一度もヨタカの生息を確認できませんでした。戦後造成された日本の人工林は伐期に達し、各地で伐採されるようになっています。今後も調査を継続し、人工林伐採のヨタカにとっての意義を検証したいと考えています。
タンチョウの給餌場滞在時間に関わる要因は何だろうか?
正富宏之・正富欣之(タンチョウリサーチ)
近年、野鳥への給餌が問題になっているが、絶滅が危惧されたタンチョウにとっては、まさに強力な救いの手であった。それにより、制限要因の冬期餌不足が緩和され、個体群成長が継続して「千羽鶴」も現実のものとなった。反面、餌という強力な誘因による限られた場所への過度の集中が、リスク増大化として捉えられ、その低減が課題となっている。
この課題解決の基礎として、各個体が実際にどのように給餌場を利用しているかを知ることが必要である。しかし、これまでそうしたことを目的とした調査はほとんど行なわれていない。今回の報告は、別の目的で得られた限定的な資料を基に、標識を付けた個々のツルが給餌場をどの程度利用しているかを概観し、それにかかわる想定しうる要因を列挙しながら、今後の調査の課題を摘出することを意図した。
【ポスター発表要旨】-順次追加します
GPSデータロガーによるリュウキュウアカショウビンの渡り追跡
植村慎吾(北海道大学)
GPSデータロガーを用いて、リュウキュウアカショウビンの渡りルート及び越冬地を調べた。2016年に宮古島で繁殖した3ペア6羽の個体に装着したロガーのうち3個を2017年に回収し、そのうちの2個からデータを得ることが出来た。これによって、従来知られていなかったリュウキュウアカショウビンの越冬地への渡りルートや越冬地を解明した。ところが、使用したロガーは地点の記録ができなかった日があったほか、予定よりも早く電池が切れており、繁殖地へ帰還するルートはわからなかった。
最終氷期が生み出す環日本海地域における集団動態の並行性 ~カケス Garrulus glandarius の系統地理学的研究から~
青木大輔(北海道大学)
北東アジアの環日本海地域は、南北に伸びる日本海をユーラシア大陸と日本列島が囲む特異的な地形から成る。この地域では多数の種内で大陸と列島間の深い分子系統の分化が近年示唆されているが、網羅的な研究は進んでいない。本研究ではカケス
Garrulus glandarius を対象種とし、系統分化の時代背景、及び現在の遺伝的構造を創出した集団動態の解明を目的とした。
カケスでは大陸系統と列島系統の分化が種内の最も初期のイベントとして確かめられた。この系統分化は大陸と列島を繋ぐ陸橋の形成・消滅が分化の引き金となった可能性がある。遺伝的集団動態解析から、大陸・列島間で日本海を挟んだ、南北に並行的な集団動態が、本種の系統分化と地域特異性の維持において大きな影響を与えたと推察された。本研究で示唆されたカケスの集団史と同様に、環日本海の独特な地形構造と第四紀の気候変動に伴った大陸・列島間での並行的集団動態が、同地域の鳥類多様性創出において重要な役割を果たした可能性があると考えられる。
神奈川照ヶ崎と北海道のアオバト初認日比較
大坂英樹(こまたん)
北海道各地でのアオバトの初認日が分かってきた。神奈川県照ヶ崎では平均4月29日に対し、ウトナイ湖では6月11日、張碓海岸では5月31日であり、道南(函館、支笏湖)、道東(上士幌、阿寒、春国袋、霧多布)はウトナイ湖の初認日よりそれぞれ約20日、約8日早く、道北(クッチャロ湖、初山別)はウトナイ湖とほぼ同じ6月12日、知床は6月26日と15日遅かった。これらの差は渡来地の餌環境を反映し寒冷地に行くほど初認が遅れたと理解できるが、道南のウトナイ湖が特に遅いことから植物の生育が他所と異なるのかもしれない。また照ヶ崎のアオバトは繁殖地との移動中にタカに襲われるなどし海水吸飲はリスクの高い行動だが、海と繁殖地が近接する北海道ではそうでないかもしれない。照ヶ崎と北海道のアオバトの行動比較で謎解明に繋がると期待される。
島嶼の鳥類繁殖分布調査
佐藤望(バードサーチ)
東京都に属する伊豆諸島や小笠原諸島には大小様々な島があり、島によって生息する鳥類が異なることが知られている。しかし、統一的な調査は長年行われていなかった。そこで、それぞれの島の生息鳥類を明らかにするため、12島で鳥類の繁殖状況を調査した。調査は2017年の5月~6月にかけて、3次メッシュごとに確認した鳥の種名、個体数、繁殖状況を記録する方法で、延べ60名以上で行った。本研究から地理的な分布が種によって異なる事が明らかとなった。例えば、本土に最も近い伊豆大島ではムクドリやハシボソガラスなど他の島では観察されなかった本土の鳥類が多く観察された。一方、ヒヨドリは伊豆大島ではほとんど確認できず、本土から遠い八丈島や三宅島などで多く確認された。また、先行研究と比較すると、数十年の間で、分布が変化している種がいる事も本調査で示唆された。例えば、イイジマムシクイは1970年代にすべての有人島で確認されているのに対し、本調査ではいくつかの島で確認する事ができなかった。本発表では上記に加え、各鳥類の分布について紹介する。
九十九里浜のシロチドリ保護柵と効果
守屋年史(バードサーチ)
シロチドリ(Charadrius alexandrinus)
は、本州以南では留鳥とされ、砂浜や河原、造成地など開けた場所で繁殖を行う。近年、減少傾向にあり最新の環境省レッドリスト2017(環境省2017)では、絶滅危惧II類(VU)として掲載されている。我々のグループでは、千葉県九十九里浜の砂浜環境においてシロチドリの繁殖状況をモニタリングしており、抱卵期の死亡率はす約40%以下であることを把握している。主な失敗の要因は、捕食によるものと考えられており、今年度繁殖期に保全対策として営巣地の保護柵を設置した。その運用と効果について報告する。
GPSで追跡した伊豆沼のオオハクチョウ
植田睦之・内田聖・嶋田哲郎・杉野目斉・高橋佑亮・時田賢一・三上かつら
2016年11月,伊豆沼でオオハクチョウにGPS発信機を装着し,その移動を追跡した。11月23日に伊豆沼を飛び立ったオオハクチョウは茨城県の大塚池公園で越冬した。3月11日には北への渡りを開始し,北上川を北上し,六ケ所村,むかわ,富良野を経て,帯広で3月20日から約1か月滞在した。そしてサロマ湖を経てサハリン南端のアニワ湾へと移動したところで電波の圏外となり追跡できなくなった。
越冬地の大塚池公園では,周囲の水田に採食に行っていたが,くり返し同じ場所で採食し,別の場所に採食地を変えても,再び数日後には元の採食地に戻ってくるなど,場所への執着が見られた。
鳥の卵:形と色の謎
黒沢令子(バードサーチ)
鳥の卵は球でもなく完全な楕円体でもない不思議な形をしている。また、白から色や複雑な斑紋のあるものまで、多様である。鳥の卵の研究史を紐解きながら、これらがなぜそうなっているのか、従来の仮説を紹介し、卵研究の将来性を見通してみる。参加者の方々と色々と議論してみたいと思う。
マガン観察会
マガンの朝の飛び立ちを観察します。
時間 10/1(日曜日)5:00~7:00ごろ
場所 宮島沼(マガンの最大の中継地)
集合 宮島沼水鳥湿地センター 駐車場 AM5:00 現地集合です。
準備 双眼鏡など