プロジェクト紹介

オオタカ繁殖状況調査



 2017年9月21日,オオタカが種の保存法の「国内希少野生動植物種」から解除されました。これまでの保護活動の成果として喜ばしいことですが,2000年代まで個体数を回復させていたオオタカが,それ以降減少傾向にあり,また,繁殖成績も悪化傾向にある可能性が見えてきて,今後も,安泰とは言えない状況です。そこでオオタカの繁殖状況のモニタリングをすることにしました。


毎年の繁殖状況を継続して記録していきます

 猛禽類は警戒心も強く,調査は簡単でありません。そこで,日本オオタカネットワークなどと共同で,オオタカをすでに観察をしている方々の協力を得て,繁殖状況のモニタリングをすることにしました。オオタカの観察をされている方はこちらより情報をお送りください。

これまでの成果

 2024年度のオオタカ繁殖状況については、137巣の状況をご報告いただきました。
 1羽でもヒナが巣立った巣を成功(成功した可能性も含む)として、その成功率の変化をまとめてみました。情報収集をスタートした2016年以降、2018年に70%台になってから2023年まで70%以上で推移していましたが、2024年に58.3%と最低の値を記録しました(図1)。



図1 2016-2024年のオオタカの繁殖成功率の変化。


 繁殖に失敗した巣を0羽として、巣立ちヒナ数別の巣の割合をまとめました。「ヒナ数不明」という情報を除いているので、繁殖に失敗した巣を過大に評価してしまっている可能性があります。2024年は、繁殖に失敗した0羽の巣の比率が最も多く、報告された数も68巣となり最多となっています。また、2羽巣立った巣の比率も最も低く、1羽、3羽以上の巣も最低水準となりました。



図2 2016-2024年のオオタカの巣立ちヒナ数数別の巣の割合の変化。

 繁殖に成功した巣のみのヒナ数の平均は、2024年は1.84羽とこれまでの平均1.97羽(1.79~2.33羽)を下回りました。最低値ではありませんが減少傾向にありました。確認した全巣の平均では、今年は0羽の巣が多かったので、大きく落ち込んでいました。



図3 平均巣立ちヒナ数の変化。

 減少傾向が見られており注視が必要と考えられます。継続して調査していくことで、減少している場合はその原因や対策について明らかにしていきたいと思っています。


成果物

植田睦之, 遠藤孝一, 高橋誠, 内田博, 平井克亥, 今森達也, 天野弘朗 (2022) オオタカの繁殖状況と国内希少野生動植物種からの解除の影響.Bird Research 18: A99-A107.