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2024年度バードリサーチ活動報告

特定非営利活動法人 バードリサーチ


鳥類や自然環境の基礎情報の収集解析事業

本プロジェクトでは,保全に利用することのできる基礎的な情報を収集,データベース化することを目的に活動しています。目的が一致している環境省のモニタリングサイト1000に関わるとともに,モニタリングサイト1000では漏れてしまうような身近な場所での情報収集をすすめています。また,長期間のモニタリングに不可欠と考えている自動的な情報収集の手法開発を,また特定の種にしぼった情報収集としてガビチョウやイワヒバリ等の調査をすすめています。

鳥類相のモニタリング

  • モニタリング事業
    委託主 環境省,自主事業
    目的 全国の鳥類相の変化をモニタリングできる体制を構築し,実施する。変化の原因を明らかにし,保全に役立てる。
    内容と成果 環境省のモニタリングサイト1000の受託を受け,陸生鳥類,ガンカモ類およびシギ・チドリ類についての調査の運営およびデータの蓄積や解析を行なった。また里山の調査についても検討委員として関わった。
  • 野鳥データベース
    委託主 自主事業
    目的 野鳥データベース「バードノート」(フィールドノートから改名)の普及と、野鳥観察データの収集強化。
    内容と成果 野鳥DB普及行事として1月・5月に2週間で開催。2025年1月は330名が参加、2025年5月は249名が参加した。バードノートの通算の記録数は延べで約31万地点になった。
  • 地域野鳥団体が蓄積したデータ解析
    委託主 自主事業
    目的 地域の野鳥を調査している団体と連携し、各地の野鳥の変化を解析する。
    内容と成果 八王子・日野カワセミ会と世田谷トラストが1990年代から2020年代までの定点調査のカウント記録を提供してもらい解析を進めている。モニタリング事業でカバーが少ない都市域での鳥類相の解析を目指す。
  • 古い野帳のデータベース化
    委託主 自主事業
    目的 紙媒体の野帳に記録された古い鳥の観察記録をデータベース化する。
    内容と成果 高野伸二さん、塚本洋三さん、由井正敏さんの野帳をお預かりし、データを抽出。プロジェクトと成果の一部を日本鳥学会2025年度大会で発表した。
  • 高山帯鳥類調査
    委託主 自主事業
    目的 モニタリングが十分行われていない高山帯の鳥類の調査を実施する
    内容と成果 株式会社モンベルからの支援を受けて,登山者へも呼びかけ,高山の鳥の調査を実施している。2024年度は、一時休止させて調査活動は行わなかった。

種を対象としたモニタリング

  • 分布変化の調査
    委託主 自主事業
    目的 減少しているシロチドリ,タマシギ,ヒクイナ,ヨタカ,分布拡大している外来鳥やリュウキュウサンショウクイ,セグロカッコウ,年変動の大きい特定の冬鳥等の生息状況とその変化の有無,原因を明らかにする。
    内容と成果 シロチドリは九十九里浜でのモニタリング調査と、信州大笠原研と協働で遺伝子解析の血液採取を実施した。サンショウクイの情報も継続的に届いている。

生物季節のモニタリング

  • 季節前線ウォッチ
    委託主 自主事業
    目的 だれでも識別できる鳥の生物季節情報を収集し,温暖化の影響など明らかにする。
    内容と成果 春はウグイス,ヒバリ,ツバメ,カッコウ類やシギ・チドリなどの情報を集め,秋はモズ,ヒヨドリ,ジョウビタキ,ツグミ,ミヤマガラスの情報を集めた。ウグイスとツバメの初認予報も継続した。昨年度のデータから、ツグミの初認は全体として遅くなっているものの、標高200m以上の地域では逆に早まる傾向が見られました。また、今年度の春のデータから、ツバメのピークは全国的に3月下旬であったことが分かった。
  • 森林性鳥類の繁殖時期の把握
    委託主 自主事業
    目的 一般参加型の調査では難しい森林の鳥類の繁殖時期を把握する。
    内容と成果 巣箱の温度ロガーを利用して森林性鳥類の繁殖時期の把握を行なった。巣箱調査では,暖かい年に繁殖成績が悪い年があることがわかり,その失敗原因を明らかにするために巣箱カメラも設置した。

鳥類や自然環境の保全施策の立案提言事業

 本プロジェクトは人と鳥類の共存のために,その手法を構築していくことを目的としています。現在,人との軋轢のある種としてカワウとコブハクチョウを,希少種として猛禽類を,身近な鳥としてツバメをモデルケースとして事業を実施しています。

保護管理推進事業

  • カワウの広域保護管理の推進
    委託主 環境省,関東地方環境事務所,中部地方環境事務所,関西広域連合
    目的 カワウの広域的かつ計画的な管理を推進する
    内容と成果 関東カワウ広域協議会の開催支援や,中部近畿カワウ広域協議会の運営や情報共有を支援し,関西広域連合域におけるカワウの生息状況や被害状況の調査を実施し,委員や講師として全国の都道府県のカワウの管理を指導し,個体群管理の推進について専門家を集めた検討を行ったほか,都道府県や市町村の行政担当者向けにカワウの管理の基礎と応用に関するオンライン研修会の開催を行った。
  • 千葉県コブハクチョウ調査
    委託主 千葉県
    目的 一部地域で増加しつつあり,農業被害も出始めているコブハクチョウの管理を推進する
    内容と成果 手賀沼を中心に千葉県北部に生息しているコブハクチョウの現状を把握するため、5月に手賀沼、印旛沼、将監川、根木名川、利根川を調査したところ、成鳥89羽、幼鳥21羽を確認した。成鳥の個体数は、繁殖期に調査を実施している2020年度以降では最も少ない個体数であった。一方で、これまで繁殖記録がなかった東庄町で1巣の営巣が記録された。これまでで最も東側に当たる記録であり、千葉県内でのさらなる繁殖分布拡大が懸念される。
  • ハマシギの保全に関するマニュアル作成
    委託主 環境省
    目的 ハマシギの保全に資するマニュアル作成
    内容と成果 環境省と共同での発刊は難色を示されていたが、自然に基づく解決策(Nature-based Solutions、NbS)として、共生事例を取り入れた沿岸湿地開発のガイドラインとして再検討することになった。

その他

  • ツバメかんさつ全国ネットワーク
    委託主 独自事業
    目的 ツバメの調査と保護を行い、その過程でバードリサーチの名前を研究分野以外の一般社会に浸透させる。
    内容と成果 今期から社団法人Tsubame Japanと協同で活動を行っている。(株)シーアイシーのスポンサーでツバメのフン受け1200枚を道の駅・鉄道の駅、その他施設に無償配布。事務所最寄りの国立駅や多摩地域での人工巣やカラス避けの設置活動。クラウドファンディングを実施して、520,500円が集まった。
  • 渡り鳥飛来状況調査
    委託主 環境省
    目的 鳥インフルエンザの防疫対策のためのガンカモ類の飛来状況の調査及び情報提供
    内容と成果 30か所の調査地で10月から翌年3月までの間,月2回の調査を実施し,取りまとめを行った。環境省の調査する23か所の国指定鳥獣保護区の調査結果の取りまとめを行い,上記の30か所の調査地と併せて環境省のホームページに掲載した。
  • オオタカモニタリング調査                  
    委託主 独自事業
    目的 希少種解除後のオオタカの状況を監視
    内容と成果 環境省によるオオタカのモニタリングが終了し,日本オオタカネットワークなどと協力してモニタリングを継続した。2024年繁殖期も,オオタカが減少傾向にあることが示された。
  • フィリピンの夏鳥越冬地を守る森林コーヒーの支援
    委託主 独自事業
    目的 フィリピン山岳地帯の森林農法コーヒー園で野鳥が生息できる環境管理を行い、農家を支援するため日本でのコーヒーの販路を広げる
    内容と成果 第2回・3回のモニタリング調査実施。そしてかすみ網での捕獲調査を実施した。目視調査では79種、かすみ網で9種を記録することができた。
  • 鳥類の食性データの収集
    委託主 独自事業
    目的 鳥類の食性に関する情報収集
    内容と成果 基礎的な情報が不足している鳥類の食性について情報を収集し、蓄積している。いくつかのテーマで記録をまとめ、発信した。データ収集の窓口を改善するためのクラウドファンディングを実施し、目標額を達成した。窓口改善に取り掛かっている。
  • 東白川村FSC認証林の鳥類相調査
    委託主 WWFジャパン
    目的 東白川村のFSC認証林の鳥類相を調査し、その価値を評価する方法を確立すること、継続的なモニタリング体制を作ること、OECMなどの評価のための評価手法の実証
    内容と成果 村内の森林を踏査して調査地点16地点の選定と比較調査のための調査設計を行った。また、それに基づいて、5月と5月に2回ずつ計4回の調査をモニ1000のスポットセンサスに準じた方法で実施した。下層植生の違いなどで区分した調査地間で、鳥類ギルドごとの出現個体数に違いがあり、森林施業の工夫で鳥類相を豊かにするための方向性を示した。
  • カワウの巣の昆虫調査
    委託主 自主事業・助成金(プロナトゥーラ)
    目的 カワウのコロニーに発生する昆虫の種類と数および、それらのカワウの繁殖段階による変化を記述する。
    内容と成果 全国4箇所のコロニーで繁殖期の前期および後期に昆虫トラップの設置と回収を行なった。昆虫の同定と計数を行なっている。

自然環境の改善の立案提言事業

今年度は実施せず

自然環境保全と調査研究についての普及啓発事業

 本プロジェクトは全国的な調査を担うアマチュア研究者を育成することを目的に実施しています。そのために以下の活動を行なうとともに,さまざまな調査の研修会も実施しました。

  • 調査研究支援プロジェクト
    調査研究のプランが23件集まり,この中から8件の支援先プランを選定し,これにバードリサーチからの1件を追加して9件を支援対象とした。支援対象とした調査研究プランをもとに寄付を募ったところ,589票の投票と1,767,000円の寄付が得られた。この寄付を得票数に応じて支援先に配分し贈呈した。
  • ID-BIRD
    九十九里浜でミニクルを実施し,調査を体験してもらった。TORI-quizなどを拡充して,ホームページコンテンツを整理した。
  • 鳥類学大会
    会員やバードウォッチャーの発表機会の創出と鳥類の調査や研究に関わる人の交流の場の創出のため鳥類学大会を12月にオンラインで開催し、379名の参加が得られ、ポスター発表39題の発表があった。投票型の発表賞を設けた。バードリサーチの活動報告、調査研究支援プロジェクトよりバードリサーチ賞の授賞式・受賞講演、支援プロジェクトのプレゼンなどを行なった。企業広告と有料チケット収入を得た。
  • ホームページ等の更新
    バードリサーチの活動を広報するため,ホームページ,ブログ,Facebookページを随時更新した。ホームページは全面リニューアルの準備をスタートした。
  • ニュースレターの発行
    ニュースレターを随時発行した.水鳥通信を1回発行した。
  • 研究誌の発行
    16本の論文を掲載した第20巻を2024年12月に発行した.また第21巻の論文は3本掲載し,5本の投稿を受け付けている。
  • 活動報告書の発行
    バードリサーチの1年の活動を会員や外部の人によりわかりやすく伝えるため,活動報告書を発行した.


貸借対照表

NPO法人 バードリサーチ

2025年6月30日 現在 (単位:円)

資産の部
【流動資産】
180,978,559
 現金預金
171,068,829
 
 未収入金 0
 前払費用
9,909,730
 
【固定資産】
2,256,553
 船舶レーダー
1
 
 エアコン 100,547   
 パーテーション 1   
 敷金 633,600   
 ソフトウェア 1,522,405
資産合計   183,235,112
負債の部
【流動負債】    
 未払金
0
 
 未払い消費税 1,820,100  
 預り金
394,495
 
 前受け金
29,905,454
 
負債合計  
29,905,454
正味財産の部
前期繰越正味財産 150,517,751  
当期正味財産増減額
2,811,907
 
正味財産合計
153,329,658
 
負債および正味財産合計
183,235,112
 



損益計算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2024年7月1日   至 2025年6月30日 (単位:円)


事業損益の部
収入の部
会費収入
2,611,000
 
寄付金収入
3,868,503
 
基礎情報の収集解析事業
41,209,948
 
保全施策の立案提言事業
30,054,143
 
自然環境の改善の立案提言事業
0
 
普及啓発事業ほか 1,209,614   
民間助成金 7,775,000
その他  
収入合計   86,728,208
支出の部
【事業費】    
 基礎情報の収集解析事業
17,617,878
 
 保全施策の立案提言事業
21,391,012
 
 自然環境の改善の立案提言事業
0
 
 普及啓発事業
1,501,213
 
 人件費
28,205,695
 
【管理費】    
 人件費
7,051,424
 
 その他経費
8,056,445
 
支出合計  
83,823,667
法人税等  
230,000
当期収支  
2,811,907
前期繰越損益  
150,517,751
次期繰越損益  
153,329,658



会費・寄付金収支決算書

NPO法人 バードリサーチ

自 2024年7月1日   至 2025年6月30日(単位:円)


収入  
 会費収入 2,611,000
 寄付金収入(一般) 2,095,503
 寄付金収入(研究支援) 1,773,000
 助成金収入 7,775,000
 雑収入 0
支出
 
 普及啓発事業1,501,213
 研究支援プロジェクト 1,850,185
 ツバメ保護 467,325
 さえずりナビ 613,185
 地球環境基金 5,955,230
 鳥類学大会 60,250
 食性Db 59,073
 サントリー愛鳥基金 1,611,580
 一般管理費 8,663,413
当期収支 -6,592,763